聖剣伝説3 デュランVS紅蓮の魔導士 1

デュラン

「おまえが侵入者かッ」
デュランは魔導士に向けて、突進した。
フォルセナ王国で年に1度開かれる武術大会。デュランは今日の昼間、そこで優勝を果たしたばかりの少年騎士だ。夜の城内警邏中に怪しい人影をみつけ、追ってきたのだった。
「その格好……魔導王国アルテアの密偵だなッ! 覚悟しろッ!」
デュランは一直線に魔導士に向けて突進した。武術王国として名高いフォルセナ――そこで最も強いと認められた自信がさせる、迷いのない踏み込みだ。
剣を横一線に薙ぎ払う。
(捉えた!)
はずだった。
だが刃が切り裂く一瞬前に魔導士の姿は消え、少年の剣は虚しく空を切る。
「くっ。何処へ……」
次の瞬間、息がかかるほど近くから声がかかった。
「ここだ」
首筋にナイフを当てられたような驚愕がデュランの表情に走った。
魔導士は、剣を払ったままのデュランの背後に立っていた。特に武器を構えるでもなく悠然と。
戦いで背後を取られることは武人としての死を意味する。魔導士が本気であれば、今頃デュランの命は絶えているだろう。
デュランはその事実に愕然とし、一瞬、無防備に硬直する。
「これが王国一の実力か」
「くっ――」
我に返り、振り向きざま剣を振るう。
だが魔導士はまたしても流れるような動きでそれをかわした。
「……フフフフ……ハハハハ」
「な、何がおかしい!!」
「……どうやら、おまえはこの城で一番の剣の使い手である事を誇りにしているようだが、身の程知らずを思い知るがいい……」
「だまれっ!!」
デュランは何度も何度も剣を振るう。魔導士はそれをすべて余裕にかわす。子供扱いのように。デュランはその態度に激昂し、何度も踏み込んだ。だが当たらない。
「ぜぇっ、ぜぇっ、ぜぇっ……」
デュランが立ち止まり、肩で息をしたその一瞬。
魔導士は手をかざし、一言、呪文を唱えた。
轟音。
デュランの視界が真っ赤に染まった。

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