ケンタの敗北2

「うあっ!」
「ケンタくん!?」
「理、理恵ちゃ――うああっ!」
 がっしりした中学生の手が、獲物に食い込むように健太の股間を掴んでいる。身体をよじって逃れようとしたが、がっちりと掴んだ手は離れることなく、逆に逸物が強烈にねじり上げられただけだった。
「うわああああ!!」
 得体の知れない感覚が全身を走り、力があっという間に身体から抜け落ちていった。
 今までも、魔獣との戦いで何度もやられそうになったことはある。全身の骨が折られたことも、バラバラに砕け散りそうなパンチを食らったことだって何度もある。それでもずっとなんとか耐えてきた。痛さや苦しさに対するケンタの耐性は、常人のそれの比ではなかった。
 だが、今下腹部から這い上がってくる感覚は、そういったものとは違っていた。健太の防御力を素通りして、直接内部を攻撃してくるような……。
「く、はなせ……あ、ああああっ」
 眼前の理恵が、何が起こったのかわからないというように、見開いた目で健太を見つめている。圧倒的な力で上級生達を倒した健太が、何故身体の一部を掴まれただけのことで身動きが取れなくなっているか、わからないのだ。
(理恵ちゃんを……守らなきゃ……)
 三度、下腹部に刺激が走った。むぎゅ、と掴み上げられる。
「うああああっ! あっ……」
「どうしたの、ケンタくん」
 突然、女の声が聞こえた。理恵の向こう、物陰から姿を現した。
 白衣をまとった、ロングヘアの……
「吉永先生……」
 振り返り、理恵が言った。
 後ろから股間を掴まれ、半ば倒れ込みそうになりながら、健太も見た。
 保健の吉永先生だ。反イービル組織の一員であり、健太も何度も世話になったことがある。心の中で、健太は安堵の吐息をついた。
「せ、先生……ぐうっ」
「何をやっているの、ケンタくん」
「た、助けて……。か、身体が……あ、うあぁぁ」
「あなたの力なら、それくらい振り解けるでしょう?」
「ち、力が……入ら……があっ」
「そう……。いくら強いといっても、やっぱり男の子なんだ。計算通りだわ」
「え……?」
 逸物をねじり上げられ、苦悶の声をあげながら、健太は吉永を見やった。彼女は口元に酷薄な笑みを浮かべていた。


 

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