ケンタの敗北1

「そこまでだっ」
 健太が叫ぶと、中学生達は振り返った。
 小中一貫の健太の学校。その人の気配のない、体育館裏である。
 体育の授業が終わって教室に戻ると、健太の机の中に脅迫状が放り込まれていた。クラスメイトの理恵をさらったというもので、返してほしければ一人で体育館裏へ来いと書かれていた。
 すぐに組織の奴らだと健太は検討をつけた。世界征服を目論む悪の組織イービル。校舎内の者が奴らに通じているということは、調べがついていた。
 体操服姿の上下。薄手のシャツに短パンの姿のまま、健太は駆け出していた。
 使命のためとはいえ転校の多さに、健太はいつも寂しい思いを感じていた。地球を守るヒーローとはいえ、健太もまだ小学6年生の子供なのだ。転校のたびに離れていく友だち。もう友だちなんて作らないと決めたこともあった。
 だが理恵はそんな彼に優しく接してくれた。理恵の身に危険が迫っていると知り、健太は矢も盾もたまらなくなってしまったのだった。
「理恵ちゃんを……離せっ!!」
 健太は中学生達に飛び掛かった。
 同学年の中でさえ、背の順では前から数えた方が早い健太だ。中学生達との体格差は二回り以上あった。だがその素早さと力は、大人でも太刀打ちできるものではない。いや、人外の力を持った魔獣でさえ太刀打ちできるものではないのだ。
「理恵ちゃん!」
 健太は瞬く間に中学生達を沈めると、理恵に駆け寄った。理恵は泣きはらしながら健太に抱きついてきた。健太は頬を染め、一瞬、どうしていいか迷った。その一瞬の隙をつかれていた。
「うっ!!」
 下腹部に強烈な衝撃を感じた。
 下を見やると、健太の股の下をくぐって後ろから伸びた手が、彼の股間を鷲掴みにしていた。


 

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