「あうっ」
下着の布の擦れが刺激となって、デュランが苦痛とは違った声をあげた。
驚いたような目を魔導士に向ける。
「……なっ……にっ」
「ふふふ。きさまはこれから、あのとき死を乞っておけば良かったと願いながら、生きていくことになるだろう。騎士として最大の屈辱を与えられ、きさまらには命よりも尊い、プライドを砕かれて屍になるのだ」
「なっ……」
徐々に握りしめられた股間に、微細な振動が加えられていく。デュランは気付き――戦慄した。
「や、やめ――あ、あはあっ」
魔導士の微細な指先の動きに、堪らず喘ぎ声をあげる。自分の口から漏れたその声が、騎士としてのプライドを汚していく。
今度こそデュランは追い詰められた。
国に、王に――立派な騎士だった父に恥じないような男になること。それが少年の幼い頃からの信念であり、自分に賭した約束だった。どれだけやられても、それを曲げない限り彼の気高き心は屈しなかった。
だが――
「ふふ、さあ堕ちろ」
「お、おはあ…っ! あかっ――や、やめろぉっ……やめてくれぇ……」
「嘘つくなよ。身体は正直だぞ」
堅くなり始めたデュランの逸物を、魔導士はしごく。どうすれば少年に快楽という地獄を与えることができるか熟知している手捌きで。
「あ、あはぁっ…! あ、ぁくっ…かぁっ、、ぁぁっっ、、」
「そら、震えているぞ」
「ぉぁぁぁっっ、、わぁぁぁぁっっ、あ、あくっ…! …ッぁ、ぁぁぁぁぁぁ…」
「さあ、最期だ」
もはやデュランが限界に達したことを知り、魔導士は一度手をとめた。
デュランの牡はズボンを突き破るように怒張しており、か細く震えている。先走りが染みになっている。
「もう一擦りで、もはやおまえは耐えられまい」
「…………」
「敵の手にかかって射精させられる気分はどうだ? これほどの屈辱はあるまい。噴出したそのとき、もはやきさまは騎士ではなくなる。高潔な騎士の夢は終わりだ。負け犬として一生生き恥を晒して生きていく……きさまのような男には、死より苦痛だろう」
「…………ぅ、ぅぅぅっ!」
「くくく。無様な男よ。あの男の息子がこの程度とはな。さあ、とどめだ」
「…………と、」
「……ん?」
「とうさ…ん…っ」
魔導士は少年のうわ言のような言葉に、一瞬、なぜか慈愛のような笑みを浮かべた。
それもすぐに消える。そっと、最期の一擦りに向け、手に力をこめる。
(デュラン。おまえは男の子だ)
半ば気を失ったデュランの耳に、声が響いた。遥か昔、子供の頃。王国最強の騎士だった父の最期の戦い。ドラゴン退治に出かけたときの記憶だ。
父は屈みこんで、デュランの頭を撫でた。
(妹と母さんを頼んだぞ)
確信に満ちた声で続けた。
(おまえは、立派な騎士になれるな)
魔導士の最期の一擦りが――終わった。
魔導士は、そっと手を放すと立ち上がった。
放心した様子のデュランに、背を向ける。
次の瞬間。
――どぴゅっどぴゅどぴゅっっっどぴゅっ!!
デュランの股間から、精が噴出していた。それは騎士の誇りが潰えることだった。ズボンが穢れていく。それは未来が踏み躙られることだった。
デュランはしばらく射精したまま放心していたが……やがてその瞳から力が失われた。
そのまま、地面に倒れる。開いたままの瞳は、天を向いたまま、しかし何も映していない。
どこかで鐘の音が鳴り響いた。大勢の足音が迫ってくる。生き残っていた兵士達だろう。
「今日はこれで引き上げよう。慌てなくても、きさまのようなザコ相手ならいつでも、たやすく我らの占領下に置くことができだろう。フハッハッハッハ」
魔導士の嘲りにも、デュランは反応することができない。
デュランの心は、砕かれていた。
デュランは完全に敗北したのだ。
魔導士の姿が虚空に消えた。大勢の靴音が迫ってくる。
(とう…さ…ん…)
――どぴゅっ
最後の射精とともに、デュランの意識は真っ黒な泥の中に引きずり込まれていった。
【聖剣伝説3プロローグ 了】